シュモクザメを岸(ショア)から釣る方法と装備【2017/08/03】
2年かかったけどようやく釣れたわ
シュモクザメ(ハンマーヘッドシャーク)を陸から釣る!
なんていう目標を立てたのが一昨年。
通い始めたのが去年。
web上にもなかなか情報が無いもんだから、正解にたどり着くまでそこそこ時間がかかってしまった(ドラクエ10の攻略記事ばっかりヒットしてしまう)
違うんだ…ゲームじゃなくてリアルで釣りたいんだ…
なんてぶつぶつ言いながら、時にはダイビングの記事やダイバーのブログなんかも確認しつつ、生息地やシーズンなんかを絞り込んで行ったのがようやく実を結んだ形。
せっかくアレコレ調べて仮説も立てつつトライ&エラーしてきたので、しっかりアウトプットしておこうと思った次第です。
では、どうぞ。
はじめに:シュモクザメの種類と生態を振り返る
世界中には9種類のシュモクザメと呼ばれる魚が生息しており、そのうち日本近海で生息が確認されているのは「アカシュモクザメ」「シロシュモクザメ」「ヒラシュモクザメ」の3種類。
いずれも4m以上と大型に成長し、ヒラシュモクザメに至っては6mを超えるとも言われている。
実際の攻撃事例は少ないが、人を食べちゃった事例もあるみたい。
とはいえ、人が食べちゃうことの方が多かったらしい。
シュモクザメのフカヒレは高級品とされ、それを目当てに大量に捕獲されてしまったらしい。ヒラシュモクザメとアカシュモクザメは絶滅危惧種に指定されている。
今回のターゲットはシロシュモクザメだ。
アカシュモクザメと生息域が被るが、T字の頭の先端部分のラインで見分けることができる。シロシュモクザメは英語で「smooth hammerhead」なんて言われているが、名前の通り頭の先端が滑らかな曲線を描いている。一方でアカシュモクザメは中心が少し窪んでおり、わりと一目瞭然だったりする。
それにしても、彼らはなぜこんな形の頭になってしまったのだろうか。
どうやら、砂地に潜むエイをその頭部で上からグッと押さえつけて動けないようにし、そのままむしゃむしゃ食べる。なんて使い方をしているらしい。
エイには毒針を持つ種類が多く存在しているがどうやらシュモクザメには効きが悪いらしく、このT字の部分に何十本もの毒針が刺さった状態で捕獲された個体もいるほど。
そこまでして食べたいか。
…親近感。
シュモクザメを岸から釣りたい:ポイント選び
基本的に暖かい海に生息する種類であり、日本での生息域は限られてくる。
結論、調べた中では本州である程度の個体数が定着できているのは伊豆半島が北限っぽい雰囲気を出していた。(ダイビングの情報を元にしています。ガチ漁師の方が聞いたら笑うかも)
あとはイレギュラーで、海流に乗って北上したやつがちらほらいるのかな?
といった印象。
伊豆半島を北限として、太平洋側の沖(水深のあるところ)とアクセスのいい場所であればいろんなところに生息しているらしい。とはいえ、そういったポイントの多くが「波の荒い危険な磯」だったり「離れ小島」だったり「長崎」だったり、関東住み公共交通機関アングラーからするとそこそこハードルの高い場所ばかり…もっと気軽に行けるところは無いのか……と検索してたら割とすぐに見つかったこの動画。
www.youtube.com
でかいサメが泳いでるー!
この情報を元に、静岡県近辺で情報を集めていると、どうやら駿河湾にはかなりの個体数がいるらしく、目撃情報も多く寄せられている。
駿河湾は深い。
非常に深い。
湾の最奥部は岸から2kmで500m程の水深となるようだ。
イワシなどの小魚も豊富で、それらを食べに大型の魚が回遊してくる。
陸からブリやカツオを狙ってる人がたくさんいた。
マグロが釣れちゃうこともあるらしい。
さて。
結論。ネットから得られた情報をまとめると、ここが1つの生息地として仮定出来る。
シュモクザメを岸から釣りたい:仕掛け
サメを釣る上で一番考慮しなければならないのは間違いなく「歯」だ。
普通の仕掛けではまず切られてしまうため、ワイヤー仕掛けを用いる必要がある。
また、シュモクザメは前述の通り海底にいる餌を食べていると考えられる。
大きなオモリを使って海底を攻める釣り方が有効だろう。
各ヒレの形状から、泳ぐスピードもかなり速そうだ。強い引きに耐えられる仕掛けを組まなければならない。また、浜から釣りをするので、波打ち際まで寄せた後ずるずるとずり上げる必要がある。1mを超え、そこそこ重量のある個体が相手になるので、かなり太い糸が必要だ。
などなど
情報がなく、釣り方が確立されていない魚を釣る時は、こうした生態や釣りをする環境について想像し、仕掛けの全体像を作っていく。
太い針に太い糸、加えてワイヤーでさらに強度アップ。
餌は血の滴る地魚(かます:38円/匹だった。やすい)
サメは2km先の血の匂いも嗅ぎ分けるっていうから、血の滴り具合は大事にしたい。
そういう意味では、冷凍よりとれたて新鮮生魚の方がなんとなく良さそうな気がする。
この仕掛けを二本準備した。
遠投用と近距離用だ。
加えて、前述の動画のように水面近くでの目撃例もあるということで、ウキ釣り用の仕掛けを準備し、さらにこの日は陸から海に向かって風が吹いていたので、その風に乗せて仕掛けを沖に運ぶことを狙った、風船仕掛けなんかも準備した。
餌を投げ込んだ後はクーラーボックスに竿を固定し、竿の先には鈴をつける。
魚がかかると鈴が教えてくれる仕組みだ。
結論、最終的なタックルは
*ライン:PE6号+リーダーナイロン20号+ワイヤー
*針 :ムツ用のでかいやつ
を
*遠くに投げられる長い竿
*糸が100m~200mくらい巻けるリール
に落ち着いた。
竿とリールは、要点が揃っていれば安いのでも大丈夫。
竿だったら「重いものが遠投できる」具体的には
・長さ:10ft以上
・パワー:60g以上のメタルジグをフルキャストできる
リールだったら「太い糸がたくさん巻ける」具体的には
・PE5号が200m以上
これらのスペックを満たしつつ、あとは「どれだけ気分がノるか」も大事。
一生モノの一匹にするために、こだわるところはこだわりたい。
「どうしてもロープロファイルのベイトリールじゃなきゃイヤ!」
とかね。
僕です。
シュモクザメを岸から釣りたい:ヒット時の状況と対処
一応、状況なんかも。
今回ポイントに選んだのはだだっ広い海岸で、正直手がかりが全くなかった。
なので竿を二本出して、岸から30mくらいの近場と、60m~70mくらいのちょっと遠くを探っていく。
サメがどのような行動パターンを持っているかは知らないけれど、もし釣れるとしたら餌を求めて回遊している個体だろう。餌を求めて回遊しているとすると、このだだっぴろい浜を岸と一定の距離を保ちながら、平行にうろつくだろうと仮定してのこと。
とすると、その一定の距離を探り当てればいい。
回遊を待つ釣りになりそうなので、一回の投げ込みに大体10~20分。反応がなければ餌を付け替え、再投入。20分後、それでも反応がなければ飛距離を変えて、餌を変えて数十分…これを何パターンか試し、もし反応が全く得られないのであれば「サメは回遊しているが、餌に気づいていない」という仮説を立て、2つの仕掛けを同じポイントに投げ込んで「血の匂いが強いエリア」を作ろうと考えていた。
投げ込みローテーション
さらに反応がなければウキ釣りに変更、攻める水深を変えていく。
事前のリサーチからこういったローテーションを組んでいた。
実際はかなり序盤で結果が出てしまったので、試せないまま終わってしまったんだけど。
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反応があったのは手前の2投目。岸から30m、餌を交換した直後だった。
竿先につけた鈴がけたたましく鳴り、リールからするすると糸が出ていく。
何度経験しても飽きることのない。
アドレナリンがどばっと出る瞬間だ。
ただ、今回は同時に恐怖も感じた。
今この瞬間、糸の先には危険生物がいる。
それも、下手をすると自分より大きい。
一瞬で糸がなくなるほど走られるかもしれない。
仮に岸まで寄せたとして、その後どうしよう。
とはいえ、かかっちゃったんだからもう後戻りはできない。
何年も待ち望んだワクワクと、一方で何かすごく悪いことをしているようなドキドキと、確実に獲りたい、失敗は許されないハラハラと。色々な感情が入り混じってこれまでに感じたことがないような不思議な気持ちになりつつ、釣竿を手に取った。
フッキングの直後、軽くジャンプのようなエラ洗いのような行動を起こし、そのまま一気に走られた。泳ぎはスピード型というよりもトルク型で、キツめに閉めたドラグからジリジリと糸が引き出されていく。
しかし、スタミナはあまり無いらしく2~3回糸を引き出されたがその後割とあっさり岸まで寄ってきた。
押し寄せる波の中に特徴的な頭部が見え、狙い通りのシュモクザメがかかったと確信する。にわかに緊張が走った。
背びれを水面から突き出しながら、シュモクザメは岸と平行に泳いでいる。
座礁寸前であるにもかかわらず、力強く糸を引き出していく。
問題はこの後。どうやって岸に引き上げるか、だ。
何度も書いているように、ここらの海岸は急深になっている。波打際も角度がきつく、1mを超えるような魚をズリあげられるような状況ではない。
この辺りをホームのフィールドとしている方々は、でかい網を持ってきて波打際の魚を掬うらしいが、公共交通機関で移動する自分はそんなもの持ち歩いていない。
とはいえ、もちろんこの状況は想定済みで。
シュモクザメの体型上、1.2mくらいまでであれば10kgを超えないだろうと見積もり、今回の仕掛けは単純な綱引きであれば10kgまでの負荷に耐えられるように作ってある。
サメが岸の方を向くよう、座礁するよう、少しずつ負荷をかけていく。
ゆっくり力を込めていくと、ふわりとサメの顔がこちらを向いた。
口の端にちょこんと引っかかっている針が、外れかかっているのが見えた。
意外と可愛らしい口でさ
半分座礁していたサメが体をクネらせひと暴れすると、口元から針がポロリと外れるのが見えた。
サメは自由を取り戻し、沖に向かって泳ぎだす。
僕はただ、虚無感に襲われながらその様子をただ見ている……
ワケにはいかなかったんだ。
餌がなくなり、針とオモリだけになった仕掛けをサメに向かって投げる。奇跡的にも針はサメの尾びれにうまく引っかかった。どうせすぐに外れてしまうだろう。泳ぎ去ろうとするサメを強引に引き止め、仕掛けの強度を信じて引っ張りあげた。
どうにか再度波打際まで寄せることができたが、やはり針はすぐに外れてしまった。
おそらく、次は無い。ならば……
恐怖はあったが、ワクワクには勝てなかった。右手に持っていた釣竿を左手に持ち替え、左足を、追って右足を海中に突っ込み、そのまま右手でサメの尾びれを掴んで岸に放り投げた。
体をくねらせて 砂利を弾き飛ばし、暴れる。そんな様子を見下ろしながら、ほっと胸を撫で下ろした。
とまあこんな感じで、ちょっとドラマチックな出来事もありつつどうにか出会えた一匹だったり。諦めなくてよかった。というより、諦めるという選択肢が最初から無かったかのような不思議な感覚。
何はともあれ、長かった夏休みの宿題がようやく一個終わった。
そんな気分でした。。
おしまい
もちろんたべる